セラミド研究会JSC Japanese Society for Ceramides

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2024年度 Young Investigator Award 受賞(企業枠)

2024.10.25

宮坂 賢知(オリザ油化株式会社 研究開発本部 新商品開発部)

受賞演題名
米由来グルコシルセラミドの自然免疫応答における構造活性相関とその作用機序

この度は栄誉あるセラミド研究会2024年度Young Investigator Awardを賜りましたことを大変光栄に思います。3年前より続けてきたセラミドの免疫賦活作用に関する研究成果を本学会で発表させていただきました。
本研究のきっかけは、大阪大学の山崎晶教授らの研究で、動物の死細胞由来グルコシルセラミド(GlcCer)が抗原提示細胞上のマクロファージ誘導性C型レクチン受容体(Mincle)に結合し、自然免疫応答を増強するというものです。この研究報告から、植物型GlcCerにも自然免疫を高める作用が期待できると考え、今回の研究に着手しました。まず臨床試験を行い、米油製造時の副産物中から得られたGlcCerを免疫力が低めの健常者に摂取させることによって、感冒症状が改善することを見出しました。そこでGlcCerの機能性表示食品を目指した免疫力の改善すなわち自然免疫増強作用に関する研究を行うことにしました。具体的には、樹状細胞や好中球を活性化するGlcCerの分子種を明らかにし、活性に必要な化学構造とその作用機序を明らかにすることを目指しました。その結果、樹状細胞においてはGlcCer[d18:2(4E,8Z)/18:0]が樹状細胞上のTLR2、4に結合し、IL-6の産生促進およびCD40、80の発現増加を介して抗原提示能を増強することが明らかになりました。一方、好中球においてはスフィンゴイド塩基がd18:2(4E,8Z)の構造を有するGlcCerがIL-8や病原体の殺菌能の一つである好中球細胞外トラップ(NETs)の産生を促進させることを見出しました。さらにMincleに関しては、佐賀大学の光武進教授との共同研究で、d18:2(4E,8Z)の構造を有するGlcCerがMincleに結合することをレポーターアッセイで証明頂きました。これらの結果から、植物型GlcCerはTLRやMincleに結合し、自然免疫を増強することが明らかになりました。この受賞を励みに、今後は生体内におけるGlcCerの有効性をマウスおよび臨床試験で検討していく予定です。
本受賞にあたり、終始ご指導いただきました北海道大学の五十嵐靖之名誉教授、光武進教授および共同研究先であり私の恩師である近畿大学の森川敏生教授に深く感謝申し上げます。この度の受賞は企業と大学との産学連携での研究成果であり、その一連の研究を評価していただいたものであると考えております。また、本研究発表に関して、北海道大学の木原章雄教授、大阪大学の井ノ口仁一教授をはじめ多くの先生方から大変貴重なコメントを頂戴し心より御礼申し上げます。今後も当社の研究がセラミド研究会の発展ならびにそれを通じた人々の健康の維持・増進に寄与できれば幸いです。

付記

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https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

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